新卒でいきなりFPの世界に飛び込んだという加納茉里栄さん。「私が若いから、未熟だから、お客様に相談するのを躊躇されるようなことがあってはならないです」と、逆にベテランFPとは違った視点での工夫やアプローチも。後編ではご自身にも近い、若い子育て世代へのアドバイスなどを伺いました。
格安スマホへの切り替え等、簡単だけど効果的な方法から実践
―子育て世代のお金の悩みというと、どういったことが多いですか?
そもそも教育資金ってどのくらい用意しておけばいいのか、というのが一番多い質問ですね。あとは、家計の管理はどうやってするのがよいかとか、貯金が苦手でできなくて、といったご相談もよくあります。
また、ママのなかでも情報に敏感な方が最近は少なくないですから、マイナス金利といった環境を受けて、銀行に預けておいても増えないがどうすればいいのかといった、ワンステップ上のご相談も増えている気がします。
―共働きの方のお金の管理で注意点はありますか?
お子さんが1人のうちは子育てと仕事が両立できていた方でも、2人3人となると難しくて、仕事を諦められるケースが少なくないのです。その場合、一度生活レベルが上がっているし、住宅を取得されていたり、お子さんにかけるお金も増えていたりしていて、退職したり時短勤務に切り替えたりされた時に対応できなくなる可能性がありますね。
また、稀なことですが、親御さんの介護の必要が出てくるなどして、働きたくても働けない状況になってしまったということも実際お聞きします。
そもそも、共働き世帯は支出の多い傾向があります。お子さんの小さいうちは余裕もあって、あまり貯金もせずに使ってしまうことに慣れていたりするんですね。それで、教育費などお子さんにお金のかかる時期になって見てみると、これだけ収入があるのに貯金がないと発覚することがよく見受けられます。もともと、ご主人の収入だけでやり繰りするためのご相談から始まっても、それまでの貯金の状況がそういうことだと相当な見直しが必要ですね。
―収入面で不安があっても、介護などで共働きはできない場合、どうすればよいでしょう?
今あるお金に働いてもらって増やす運用を考える手もありますが、まずは、支出を減らすのが一番ですね。その場合、食費など日々の生活実感に関わるものを削るのは最後にして、固定費の中でも生活自体を変えずに済むものから見直しをお勧めしています。
保険の見直しもそうですし、電気・ガス・携帯電話代をまとめるのも最近では有効ですね。格安スマホに変更したことで通信費を月1~2万減らせた例もあります。
時間のないご主人向けに、5分でわかるプレゼン資料を作成
―お客様に提案される時に、工夫されていることはありますか?
1~2年目の駆け出しの時代によくあったのが、奥様には提案をご理解いただけたけれど、ご主人に話を聞いていただけるまでに至らなかったことです。どうしてなのか、当初はよく分かっていませんでしたが、要するに、私にご相談いただくメリットが、奥様からご主人にうまく伝えられていなかったんですね。
お金のことですから、ご自身の言葉では難しいものです。それで私のほうで、ご主人に5分で見ていただけるような簡潔なプレゼン資料をお作りして、奥様からお渡しいただくようになりました。それで、ご主人にも話を聞いていただけるようになりましたね。数字などをはっきりお示ししてメリットを伝えれば、お時間を割いていただけるものです。
―お客様に喜んでいただけたことで、印象的な出来事を教えてください。
お父様を亡くされたばかりのお客様に、お母様をご紹介いただいた時のことです。ご自宅に伺っていろいろとお話させてもらい、現在の資産状況を拝見したところ、後に残される奥様のことをしっかり考えられていたと感じられるような資産形成がされていたのです。
それで、「良い形で残されています。ちゃんと考えてくださって、良いだんな様でしたね」と申し上げたらとても感動してくださって、こちらも思わずもらい泣きしてしまいました。お金のことは人生観や人柄に触れるものでもありますから、その分意義深いですし、やりがいを感じますね。
一度じっくりお金と向き合い、あとは仕組みに任せれば安心
―ご自身は、FPになってから、以前とはお金に対する意識は変わられましたか?
お金のことは、考えたほうがいい、というようなレベルでなく、本当に考えなければならない「マストなこと」だと実感するようになりました。本人にとって大事なことであると同時に、親や家族、周りの人にも影響を与えてしまうことなので、失敗は許されないでしょう。
正しい知識があればこうはなっていなかったというような残念な事例を見聞きすることもあり、勉強になりますし、何とかそうならずに済むよう、一人でも多くの人にお手伝いができればと思います。
―最後に、読者へのメッセージをお願いします。
お金のことに向き合うのはパワーの要ることなので、ついつい後回しにしがちですし、そもそも考えたくないことなのかもしれません。それでも、漠然とした不安よりは、明確な不安の方がすっきりしますし、安心できるものです。
まずは自分がなんとなく感じている不安の正体が何なのかをはっきりさせ、このままでいたら将来どうなるのかを具体化することが大事でしょう。ご自分で考えるのは大変ですが、そこはFPというプロを頼っていただければと思います。
常にお金のことでもやもやしているのはストレスですから、一度えいやっと向き合ってみて、あとはその不安に備えた仕組みを作ってしまえば、ずっと考えている必要もなくなります。毎日を楽しく過ごすためにも、一度お金のことに真剣に向き合ってみてはいかがでしょうか。
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加納茉里栄(かのうまりえ)さんのプロフィール
2014年、新卒でブロードマインド社に入社。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)。個別相談で年間約100世帯のコンサルティングを担当。節約など女性に身近なテーマでのアドバイスが好評を博している。
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