エンゲル係数と経済力

日本のエンゲル係数

みなさんはエンゲル係数という指標をご存知でしょうか。詳しくは知らないという方も単語は聴いたことがあると思います。この数値は消費支出に対する食費の割合のことで、生活水準を表す指標と言われております。一般的にエンゲル係数が高い方が生活水準は低いとされています。その理由は、食費は数ある消費の中で最も重要なものであり、節約が困難であるとされているからです。つまり最低限の食料は誰もが節約できないので、食費の消費額は大体どの所得層でも同じとなり、必然的に低所得層の方が食費の割合が高まるということです。これをエンゲルの法則といいます。

それではこの法則が正しいか実際に確認してみましょう。2016年の日本の二人以上の世帯のうち勤労世帯を対象とした収入別のエンゲル係数を見てみましょう。

Ⅰ階級(年収~449万円):27.2%
Ⅱ階級(年収449~582万円):25.6%
Ⅲ階級(年収582~772万円):25.1%
Ⅳ階級(年収722~902万円):23.5%
Ⅴ階級(年収902万円~):21.7%

確かに法則は正しいようです。

世界のエンゲル係数

それでは世界に目を向けてこのエンゲルの法則を検証してみましょう。少し古いデータになるのですが、2011年のOECD諸国のエンゲル係数と経済力の指標となる一人あたりのGDPを比較してみます。

エンゲル係数(低い順)         一人あたりのGDP(高い順)
1.米国                1.ルクセンブルク
2.ルクセンブルク           2.ノルウェー
3.オランダ              3.オーストラリア
4.ドイツ               4.デンマーク
5.オーストラリア           5.スウェーデン
6.デンマーク             6.オランダ
7.カナダ               7.カナダ
8.スウェーデン            8.アイルランド
9.イギリス              9.オーストリア
10.オーストリア           10.フィンランド
11.ノルウェー            11.日本
12.韓国               12.米国
13.ベルギー             13.ベルギー
14.日本                14.ドイツ
15.フランス              15.イギリス

この2つの指標を比較すると、エンゲル係数が低い国ほど一人あたりのGDPは高いことがわかります。ただし、エンゲル係数1位のアメリカと4位ドイツは一人あたりのGDPではそれぞれ13位、15位となっております。エンゲル係数と国の経済力は必ずしも相関関係が成り立っているわけではないようです。

 

必ずしも「エンゲル係数が低い=経済力が豊か」ではない?

この事情を考えてみると、まずアメリカは恐らく農業技術等の発達により、非常に安く食料が手に入る環境であることが挙げられると思います。単純に食費が安いからエンゲル係数も低いということです。さらに医療費が全て自己負担なので、消費のうちその割合が高いことが予想されます。一方ドイツは食事自体にお金をかける人が少ない様なので、自然とエンゲル係数が低くなります。

逆にエンゲル係数が高い国で一人あたりのGDPも高い国はそれほど多くありません。強いて上げればノルウェーです。調べるとノルウェーの物価は高く、その中でも飲食料品が特に高いようです。つまり食料品の価格が他の国よりも割高のためエンゲル係数が高いということが言えます。またアメリカとは逆で北欧は社会保障が充実している為、エンゲル係数も相対的に高くなるという事情もあるのでしょう。

この様に同じ国の中では、エンゲル係数=経済力になりますが、世界で比較するとその国の政治や文化、習慣、風土などにより事情が変わってきます。
あまり比較することに意味はないということですが、逆に比較をすることで、世界各国の違いを目の当たりにすることが出来ました。

 

 


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