大手証券の富裕層向けコンサルタントから 世界の潮流である中立的FAを志し、若い仲間と独立

大手証券会社の富裕層向け資産運用コンサルタントから、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして会社の立ち上げに参画した田中久登さん。それまでの経緯やFPの仕事の面白さ、独自の工夫などを伺います。

 

気持ちを一つにする若手で起業。独立系FAとして、顧客には迅速に情報提供

 

―現在の会社は、立ち上げから参画されていたそうですね。

大手証券会社で千里ニュータウンなどにお住まいの富裕層向けに、資産運用コンサルティングを4年間行いました。その中で、現在の社長やほかの創業メンバーと知り合うきっかけがあり、中立的な立場から資産運用のアドバイスを行うIFA、独立系ファイナンシャルアドバイザーとして創業をめざす流れに加わったのです。若手ばかりの、いわばスタートアップでしたが、だからこそ旧来の業界常識にも捉われることなく、めざしている独立性を強く保っていけるのではと期待ができました。

―仕事の内容を教えてください。

担当顧客へのアフターフォローやご提案がメインです。たとえば、マーケットの動向に敏感なお客様には、市場が急激な変動を見せるような際にはいち早く電話、もしくはメールで一報を入れさせていただき、状況をお伝えしながら現在お持ちの資産についても適切にアドバイスを行います。また、お客様のライフプランが変わるようなタイミングには、ポートフォリオや保険商品の見直しもご提案します。その際には、数字を一緒に見ながら検証することを心がけています。そのほか、相続や事業承継について相談をいただくこともあります。

日常的には、毎朝8時から定例ミーティング、9時頃からは株式投資されているお客様などにマーケットの現況や予測をお電話で解説させていただいています。10時以降は当社事務所への来店対応で、日に1~3件お受けしています。長くお付き合いいただいているお客様の定期面談もありますし、新規のご相談もありますね。

また、東京本社のほかに三重県に支店があるので、名古屋~三重~大阪方面への出張も多いです。月1~2回はあるでしょうか。ご紹介のお客様が多数おられるので、直接お話しする機会も定期的に設けているのです。

 

セミナー運営から地元消防団への参加まで、直接のコミュニケーションを重視

 

―新規のお客様と出会う場としては、どのようなものがありますか?

当社の主催で、無料の「投資信託見直しセミナー」を月3~4回は開催しています。内容としては、自己流の投資で陥りやすい失敗について、資産運用の2つの考え方をもとにお伝えするもの。話題のファンドというので購入されたけれど成果が出ていないという方や、営業マンに勧められるまま吟味もせずに購入してしまったような方に、不満や疑問の解消に役立てていただけるお話をしています。セミナー後にはご希望に応じて、個別相談の時間を設けていますが、そこで深いお話になると本格的なご相談に進むケースが多いですね。

また、楽天証券が一般投資家向けに毎年7月に行う投資イベントは4000人ほども来場する大きなものですが、そこで当社としてブース出店もしています。その際も、当社セミナーにお誘いもしますし、このような場にいらっしゃるお客様は金融リテラシーの高い方も多く、資産運用に大きな関心や問題意識をもっておられるので、当社としてもこうした機会は大事にさせていただいています。

 

―直接お話ができると、信頼感にもつながりそうですね。

もう一つ、私は東京都の豊島区在住なのですが、地域の活動を通じて古くからの住民の方々とつながりができることもあって、「池袋消防団」に入団しています。江戸時代に組織化された町火消しを前身とする、地域密着の防災機関です。災害時には近隣にいれば消火活動に当たりますし、日頃から地域の防災リーダーとして活動もします。その地域に居住または勤務していれば誰でも入団できますが、実は地元の地主様やビルオーナー様などが中心となって活動されているのです。応急救護や放水の訓練などもあり、東京都では地区ごとの「消防団操法大会」で日頃の訓練成果の発表も行っています。それに向けて団員一丸となって訓練に励んだりもし、むろん、その後には飲みながら膝詰めで話も弾みます。そうしたお付き合いが、資産のご相談につながることも、ゆくゆくはあるかもしれません。

運用会社のレポートを読み込むと、ファンドマネジャーの性格も見えてくる

 

―資産運用のご相談というお仕事をされる上で、ご自身の勉強はどのようにされていますか?

新聞や雑誌の金融記事は一通り目を通しますし、テレビ東京の経済番組も録画して、週末に必ずチェックしています。また、保険や相続などについては外部のセミナーにも参加して、常に最新情報を仕入れるよう心がけています。

ビジネス書もチェックしていますが、著者の初期の代表作を後に改定した版が、内容も充実していてよい気がしています。ひふみ投信のファンドマネジャーである藤野英人さんも多くの著書を出されていますが、『スリッパの法則』がもっとも面白いのではないでしょうか。

 

―やはり、幅広くアンテナを立てていらっしゃいますね。

仕事柄、というよりは、もう趣味の域となっているのが、投資信託運用会社のレポートのチェックです。月次や週次など頻度はさまざまですが、各社さまざまなマーケット分析を行っています。ファンドマネジャーは投資信託に組み入れる銘柄を選定するために調査面談を重ねていたりするわけです。そういう現場の方たちの声はリアルで臨場感が感じられます。

また、継続して読み込んでいくと、ファンドマネジャーごとの性格や特徴も見えてくるもの。たとえば、同じ国内株式に投資するファンドであってもそれぞれに特徴があるわけで、私自身、お客様の求めるリスクやリターンを考える時に、どちらの商品のほうがフィットするかを考えやすくなります。お客様の要望をより実現できる提案につながるという意味では、運用レポートのチェックは勉強のためであり、個人的には面白く読めるという点で、趣味といってもよいくらいなんです。

 

―今後の展望はございますか?

この仕事をしていて感じるのは、お客様にとっても当社にとっても長くお付き合いをさせていただくことです。それには、お客様の先のことを見据えた相続や事業承継についての次の世代のことも考えることが必要だと考えます。

このような長期的視野が身に付いたのは、私自身に子どもができたことによるのかもしれません。今、0歳と2歳ですが、この子たちが成人する頃に父親の仕事を見て、「20年ものお付き合いで、お客様と信頼関係を築いてきた。そういう仕事で育ててくれたのだ」と感じてもらえたら、と思うのです。

田中 久登 (たなか ひさと)さんのプロフィール

近畿大学法学部法律学科卒業後、岡三証券株式会社に入社、大阪の富裕層地域での資産運用コンサルタント業務に携わる。2013年、JPモルガンアセットマネジメント株式会社のアテンドによるシンガポール研修に参加。日本の金融ビジネスが海外と大きく異なることに疑問を感じていた時にIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)というサービスを知る。その後、退職を経て、株式会社バリューアドバイザーズの設立に参画。証券外務員1種、相続診断士。

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