遺産分割で揉めないための方法

年の瀬が近づき、年賀状の作成や挨拶まわり、忘年会など色々とイベントが沢山あるこの時期ですが、年末年始はご両親やご兄弟とお会いする方も多いと思います。

ご親族とゆっくりとお話する時間もないので、これを機にご両親の相続のお話を親族でされる方もいらっしゃると伺います。

そこで今回は遺産分割における注意点や揉めない為の方法についてお伝えします。

そもそもなぜ揉めるのか?

「遺産分割=揉める」というイメージを持っている方も多いと思いますが、それでは何が原因で揉めるのでしょうか。

答えは「分けにくい財産」が原因であることが多いです。
分けにくい財産とは具体的には不動産や自社株等です。自社株はごく一部の方しか該当しないので、今回は不動産について考えてみます。

不動産が分けにくい理由

「不動産が分けにくい」というのは、分割する手続きが難しいということではありません。分けないほうが良いという意味です。

例えば親が保有していた土地を兄弟が共有で1/2ずつ相続したとします。その後しばらくして、兄がその土地を売りたいと言った場合どうなるでしょうか。

売却に弟も賛成であれば問題ないのですが、反対すればその土地を兄は売却出来ません。
さらにその後、弟に相続が発生し弟の土地の持分が弟の相続人複数名に相続された場合、共有者が増えてしまい余計に収集が付きません。
この様に不動産の共有はトラブルの先送りになる可能性が高いのです。

こういった将来に渡るリスクもあるので、相続発生の段階で誰が相続をするかを決めるケースが多いわけです。

他にもある不動産のトラブル要因

「分けにくい」という理由以外にも相続の際に不動産で揉めるケースはあります。それは不動産の価格つまり時価についてです。
金融資産などは相続開始時の時価がはっきりとわかるので、仮に預金残高が1億円ある方の相続で相続人が子供2人であれば、5000万円ずつ平等に分けられます。

それでは不動産はどうでしょうか。
遺産分割における不動産の時価は、相続税の計算と違い、決まった計算式はありません。
ただ、揉める可能性のある場合は、全員が納得する時価を算定する必要が出て来ます。
不動産の時価の算定は非常に難しく、売買契約が成立した金額が時価となります。
そうはいっても不動産の場合は市場があるわけでは無いので、同じタイミングでも買主の属性や交渉によって価格が大幅に変わる可能性もあるのです。
そこで納得のいく落とし所がない場合には、不動産鑑定士という国家資格を保有している専門家に鑑定評価を依頼することになります。不動産鑑定士が算出した鑑定価格は裁判になった場合も公的な時価として判断されます。

しかしそれでも揉め事が収まらないこともあります。仮に揉めている当事者がそれぞれ別の不動産鑑定士に鑑定評価を依頼していた場合です。
同じ価格が出てくれば問題ないですが、それぞれ別の金額が出てくることもあります。そうなると一体何が正解なのかわからず、結局裁判所の判断を仰ぐしかありません。

この様に不動産の価格は、ある程度落とし所を決めていないと、とことん争うことになってしまいます。

揉めないための対策

不動産の分割だけでなく、相続財産全般における話なのですが、遺産分割で揉めない為には生前に被相続人(財産を渡す側の人)が対策をしっかりしておくことが重要です。
その中でも重要なことは下記となります。

・各財産の金額と財産総額を把握する

ご自身の各財産の金額と財産総額を計算しておくようにしましょう。
不動産の時価の計算は難しいと思いますが、まずはインターネットで近隣の売出事例を参考に算出してみてください。

その他には、一般的に土地の相続税計算で用いられる路線価は「公示価格(適正な地価)×80%」と言われているので、逆に「路線価÷80%」で適正な地価である公示価格ベースの概算金額を算出するという方法もあります。

・誰にどの財産を渡したいか決めて、それを相続人に相談する

財産の把握が出来た後は、それぞれの財産を誰に相続するかを考えましょう。そこまで決定したら、今度はその内容を相続人全員に事前に相談して下さい。

そこで様々な反応があると思いますので、それを踏まえて再考し、まとめてください。相続に対するお気持ちを相続人にお伝えすることは非常に重要で意味のあることです。
もちろんそれによって関係が崩れる可能性もある場合は、無理にお伝えしなくても良いです。

・分割案が決まったら、遺言書を作成する

相続人への相談が完了し、分割案が固まったら、それを確実に執行出来る様に遺言書を作成しましょう。
遺言書の種類は、無効になる可能性の低い公正証書遺言書をお勧めします。
遺言書作成することで、分割案に納得をしていない人がいる場合でも、考えを通すことが出来ます。

ただし法定相続分の半分は遺留分といって、遺言書の効力も及ばない相続人に認められる最低限の取り分となりますので、この点については気を付けて下さい。
仮に財産のほとんどが1つの不動産という場合には、生前に処分をして金融資産にするか、もしくは相続発生後に売却して分割をしてもらうといったような揉めない内容にするのかも記載することをお勧めします。

相続対策の重要性

相続発生後に出来る相続対策はほとんどありません。「あとは自由にやってくれ!」と思っている方も多いと思いますが、相続を受ける側はそうはいきません。
相続人の皆さんの幸せと良好な関係を願うのであれば、必ず生前に対策はしておきましょう。


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