加速するマンション投資
ここ数年ですっかり運用商品として定着したワンルームマンション。
注目されようになった理由はその仕組みにあります。
少ない元手で投資が可能で、返済は家賃収入で賄い、
完済後は経費を引いた収入が全て入ってくるので、年金代わりになるというスキームがわかりやすく受けが良いからなのです。
確かにお金が無くても投資が出来て、最終的には全て自分の資産になるなんて素晴らしい話です。
しかし本当にそのようなことが実現できるのでしょうか?考えてみたい思います。
完済するまで悪化し続ける資金繰り…
先ほど申し上げたようにマンション投資は少ない元手で投資できます。
場合によってはフルローンで行うことが可能です。
しかしその場合当然借入金額も大きいので、毎月の資金繰りはゼロもしくはマイナスつまり持ち出しでいくらか支払うということになります。
これが地獄の始まりなのです。
多くの投資家は「毎月1万円位だったら大丈夫だろう?」と思って投資してしまうのですが、実際にこの投資開始直後の資金繰りが一番良い状況なのです。
なぜなら今後は収入も減る一方で、支出は増えるからです。
収入については、これはみなさんご存知の通り、築年数が古くなれば当然減少します。
仮に家賃保証をしていても関係ありません。
大体は2年に1度は改定されますし、10年保証となっている場合はそもそも家賃保証額がかなり低額です。
一方で支出は管理費や修繕積立費は物件が古くなればそれだけコストが掛かるので上昇します。
また、投資開始時よりも税金も上がってゆく可能性も高いのです。
それは返済方法に理由があります。
大抵の場合、マンション投資の借入の返済方法は利息+元金の合計を一定金額支払う「元利均等法」です。
この返済方法の特徴は返済開始当初は返済金額の内訳は元金部分よりも利息部分の方が多いのですが、
徐々に返済が進むにつれて元金部分の返済額が大きくなります。
所得の計算をする上では借入利息は経費になりますが、元金返済部分は経費になりません。
つまり同じ金額の返済をしているにも関わらず返済当初は、経費に出来る金額が大きいのに対し、徐々に経費に出来る金額は少なくなってくるのです。
経費にできる金額が少ないということはそれだけ所得が上がる為、所得税を多くとられるということです。
この様に、細かく見てみると様々な部分で年数が経つごとに資金繰りが悪くなる要素があるのです。
そして最もマンション投資において重要なポイントは売却のタイミングです。
結局この売却価格が投資を勝ちとするか負けとするかの決定的な要因になります。
良いタイミングで売却する為にはご自身の相場観が必要です。
正直、業者の言うタイミングはいい加減なことが多いです。
しかし、ローンを組んでいると売りのタイミングだと分かっていても、
それでも完済が出来ない場合はなかなか売り辛く、結局タイミングを逃してしまうことがあります。
結局ローンを組んでいるとそれだけ自由度がなくなってしまうのです。
それではマンション投資は行わないほうが良いのか?
もちろんそんなことはありません。
そもそも不動産ですから値上がりする可能性もありますし、しっかりとした目利きをすれば安定収入を得ることも可能です。
ただし、そう簡単に出来るものでは無い事を肝に銘じてください。
マンション販売業者の営業トークを聴くと誰でも気軽に出来そうなイメージを持ちますが、そんなに甘くはないです。
上記の通り、ローンを利用して収益を上げることはとても難しいです。
また、自分のお金で購入しないと危機意識が薄れますが、銀行からお金を借りて投資をすることは自分のお金で投資をすることよりもよっぽど覚悟が必要なことです。
もし売りたくても完済できる金額で売れなかったらどうしますか?
家族が生活で困っているのに、返済の持ち出し金額が増えたらどうしますか?
家賃保証の契約が切られて、収入が全く入らなくなったらどうしますか?
慎重に考えましょう。
最後にひとつアドバイスをします。マンション投資の質問や相談は絶対にその営業マンにしないでください。
相談をしたところで、購入前の方であれば「大丈夫ですから、投資しましょう!」になりますし、
既に購入した人であれば、「もう一戸買いましょう」もしくは「では売却しましょう」といった業者都合の話に誘導される可能性が高いです。
こういった場合は業者と利害関係のないお金の専門家等(ファイナンシャルプランナー)に相談をしましょう。
不動産の専門家ではないですが、将来、資金繰りで最悪の事態が発生した場合でも生活が成立するかどうかを検証してもらうことは出来るので、
是非相談してみてください。
改めて申し上げますが、もしマンション投資を考えている方がいらっしゃいましたら、今一度じっくりと考えてください。