年末調整と所得控除

年末調整とは?

サラリーマンや公務員の方は年末調整の時期に入ってきていると思います。
そもそも年末調整とは何なのでしょうか。

日本の納税のシステムは申告納税方式と賦課課税方式の2種類です。
そのうち申告納税方式は自分で税金の計算をして自分で申告をするというものです。
所得税、法人税、相続税などはこの申告納税方式です。

賦課課税方式は国や地方団体などが税額を算出し納税者に通知をするものです。
不動産取得税、自動車税、固定資産税などは賦課課税方式です。

しかし、「所得税を申告・納税した記憶が無い…」という方は多いのでしょうか。

そもそもサラリーマンや公務員の大半の方は申告をしていないと思います。
その理由は会社が代わりに源泉徴収という形で給与や賞与から自動で所得税や住民税を徴収しているからです。
ただしこの源泉徴収金額は個別事情には考慮しないで計算をしているため、
実際に納めるべき税額に対して過不足があります。

それを個別事情に合わせて所得税額を確定する作業が年末調整なのです。
具体的には源泉徴収金額は「給与-社会保険料」から算出しているため、
他にも所得金額から控除できるものを考慮していません。
従いまして、年末調整を行うことで税額が還付されるというケースの方が多いです。

いろいろな所得控除

所得金額を減らすことを専門用語では所得控除といいます。
ここでは所得控除が可能な支出を確認します。
元々所得が減らせるということは言い換えれば、課税されない給与で購入したりサービスを受けたりすることが出来ているということになります。
つまり財政赤字が止まらない日本でそのような事をするということは、
税金を課税するよりも重要だと見込んでいるからということになります。

・社会保険料控除

最もメジャーな所得控除です。
サラリーマンであれば誰でも健康保険や年金保険には加入しているため、年末調整をしなくても既に控除されています。
(既に給与から社会保険料を控除した金額で源泉徴収されています。)

・生命保険料控除

民間の生命保険会社に支払っている保険料の一部が対象になります。
最大で一般の生命保険、個人年金保険、介護・医療保険でそれぞれ4万円を上限として、合計12万円まで控除可能です。(新保険料控除制度の場合)

・地震保険料控除

地震保険に加入をしていると、5万円までの保険料は全額控除の対象になります。
また5万円以上の場合も5万円が控除の対象になります。

・医療費控除

医療費が10万円以上発生した場合には、超えた分200万円までの全額が所得控除出来ます。
ただし、医療保険などから給付金を受け取っている場合は、
給付金をもらっても10万円を超えた支出についてのみ控除出来ます。
なお、平成29年1月1日~平成33年12月31日までの期間はセルフメディケーション税制が適用され、
一部の一般医薬品購入費については1万2千円を超える費用については最大で8万8千円までは所得控除の対象になります。
また、この医療費控除はご自身だけではなくご家族(生計を一にする親族)のための医療費でもご自身の所得から控除することが出来ます。

・小規模企業共済等掛金控除

一般的なものだと、確定拠出年金(iDeCo)の積立金です。
これは月々の積立金に上限があることもあり、全額が所得控除の対象になります。
従いまして、老後の生活資金を貯めるのであれば、給与の手取額から積み立てを行うよりも、
まずは確定拠出年金を行った方がお得なのです。

・寄付金控除

寄付した金額は「寄付金-2千円」が所得控除になります。
今までそれほどメジャーではなかった控除ですが、最近ではふるさと納税の影響で利用者が急増しています。
ふるさと納税とは全国の自治体に寄付をする制度です。
人気が出た理由は寄付をすると自治体ごとに色々な返礼品がもらえるため、
「実質2千円でおいしい食べ物や便利なものが沢山もらえる素晴らしい制度」となっているからです。
しかしよく考えるとあくまでも「寄付金-2千円」は所得金額から控除できるというだけです。

仮に5万円ふるさと納税をした人が、所得税率20%だとしましょう。
そうすると実質の金銭的なメリットは(5万円-2千円)×20%=9,600円です。
5万円払ったのに1万円弱しか税金が減りません。
実は寄付金控除の場合、住民税が大きく減額するため、結果的に実質2千円の負担にしかならないということなのです。
計算が複雑なので割愛しますが、一定の金額以上寄付金控除を利用しようとすると、
実質2千円負担よりも増えることもあるので注意してください。

・そのほかの控除

上記以外にも盗難や災害によって資産に損害を受けた人が利用出来る雑損控除、
配偶者と死別した一定の条件を満たした方が利用出来る寡婦(寡夫)控除、
家族に障害をお持ちの方が利用出来る障害者控除、
その他家族の所得や年齢に応じて利用出来る配偶者控除や扶養控除などがあります。

所得控除の背景

このように様々な所得控除を見てみると、国の考え方や将来に対する不安が表れていると思います。

生命保険や地震保険は万が一のことが起こった時に困らないために保険加入を促進するため。
小規模企業共済等掛金控除は、今の年金制度で国が老後の生活を保証することは出来ないので、自分で備えてほしいと考えているため。
医療費控除や雑損控除は単純にかわいそうだから。
寄付金控除は控除対象の寄付が事実上税金で賄っている様なことだから。

という考えが背景にあることが想像出来ます。
これらの国の考えを汲み取り、使えるものは使ってご自身の資産形成を上手に行って頂きたく思います。

 

 


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